少女は普通の、どこにでもいる女の子。
少女は、黒猫が大好きだった。
「死んでしまわないで」
そう願って、造った、
ここは、少女の檻の中。
ここは、少女が造った現実ではない現実。
人はそれを夢や物語と呼んだ。
少女は物語の創造主。
少女が造った世界の中で繰り広げられる物語たちは、
現実を終わらせないためのもの。
はじめに、物語を創るための世界の概念を。
その次に、概念を軸に物語を創造する創造主たちを。
そして創造主たちは少女に代わり、
それぞれの物語を創っていった。
みんなが生きている、
みんなが暮らしている、
物語が進んでいる、
それだけで十分だった。
少女は今も波紋の真ん中で横たわりながら、
ほんとうの現実から目を反らしている。